テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、肘の外側にある筋肉や腱に繰り返し負担がかかることで炎症や小さな損傷が生じ、痛みを引き起こす疾患です。 テニス選手に多くみられることから「テニス肘」と呼ばれていますが、実際には家事やデスクワーク、力仕事など、手首や指をよく使う方にも多く発症します。

原因は、手首や指を反らす働きをする筋肉(短橈側手根伸筋など)の付着部に、繰り返し負荷が加わることです。加齢による腱の変性も関係しており、40~60代に多くみられます。

主な症状は、肘の外側の痛みです。物を持ち上げる、ドアノブを回す、タオルを絞る、パソコンのキーボード操作を続けるといった動作で痛みが強くなります。一方、安静時には症状が軽いことが多いのが特徴です。進行すると握力が低下し、日常生活にも支障をきたすことがあります。

診断では、痛みの部位や誘発テストによる診察に加え、必要に応じてレントゲン検査や超音波検査、MRI検査を行い、ほかの疾患との鑑別を行います。

治療は、まず手首や肘への負担を減らすことが基本となります。消炎鎮痛薬の内服や外用薬、テニス肘バンドなどの装具療法、ストレッチや筋力訓練を中心としたリハビリテーションを行います。痛みが強い場合にはステロイド注射を行うこともあります。数か月間保存療法を続けても改善しない場合や、日常生活に大きな支障がある場合には、傷んだ腱を切除・修復する手術を検討します。

肘の外側の痛みが長く続く場合や、物を持つたびに痛みを感じる場合は、早めに手外科・整形外科を受診することをおすすめします。

関節炎

関節炎は、肘の関節内に炎症が起こり、痛みや腫れ、動かしにくさ(可動域制限)を生じる病態の総称です。加齢による変化だけでなく、関節リウマチや細菌感染、痛風などさまざまな原因で発症するため、原因を見極めた適切な治療が重要です。

代表的なものには、加齢や長年の負担、外傷などによって軟骨がすり減る「変形性肘関節症」、免疫の異常によって関節に炎症が起こる「関節リウマチ」、細菌感染による「化膿性肘関節炎」、尿酸結晶やピロリン酸カルシウム結晶が原因となる「痛風・偽痛風」などがあります。

主な症状は、肘の痛みや腫れ、熱感、動かしにくさです。進行すると肘の曲げ伸ばしが制限されるほか、変形性肘関節症では骨の変形によって神経が圧迫され、薬指や小指のしびれ(肘部管症候群)を伴うことがあります。化膿性関節炎では、急激な激しい痛みや発熱を伴うことが多く、緊急の対応が必要です。

診断では、診察に加えてレントゲン検査や超音波検査、MRI検査、血液検査などを行い、必要に応じて関節液を採取して感染や結晶の有無を調べます。

治療は原因によって異なります。変形性肘関節症では、安静や消炎鎮痛薬、装具療法、リハビリテーションなどの保存療法を行います。関節リウマチや痛風では、それぞれの疾患に対する薬物治療を行います。関節の変形が高度な場合や保存療法で改善しない場合には、関節鏡視下手術や骨棘切除術などの手術を検討します。また、化膿性関節炎では、抗菌薬による治療に加え、関節内の洗浄や排膿など緊急手術が必要となることがあります。

肘の痛みや腫れが続く場合や、急激な痛みと発熱、赤みを伴う場合は、早めに手外科・整形外科を受診することをおすすめします。

関節症

長年にわたる肘への負担や加齢、過去の骨折・脱臼などの外傷によって、関節の軟骨がすり減り、関節が変形していく疾患です。重労働に従事している方や、野球・テニスなど肘を繰り返し使うスポーツを長年続けている方に多くみられます。

軟骨がすり減ることで骨同士が直接こすれ合い、関節の周囲に骨棘(骨のとげ)が形成されるほか、軟骨や骨の破片が関節内を動く「遊離体(関節ねずみ)」が生じることがあります。

主な症状は、肘の痛みや動かしにくさです。初期には動き始めや重い物を持ったときに痛みを感じる程度ですが、進行すると肘の曲げ伸ばしが制限されるようになります。また、遊離体が関節に挟まることで突然肘が動かなくなる「ロッキング」を起こすことがあります。さらに、骨の変形によって尺骨神経が圧迫されると、薬指や小指のしびれ(肘部管症候群)を伴うこともあります。

診断では、レントゲン検査を中心に、必要に応じてCT検査やMRI検査を行い、軟骨の摩耗や骨棘、遊離体の有無、神経への影響などを評価します。

治療は、症状や進行度に応じて行います。初期には、肘への負担を減らす生活指導や装具療法、消炎鎮痛薬の内服・外用、関節内注射などの保存療法が中心となります。一方、可動域制限が強い場合やロッキングを繰り返す場合、神経症状を伴う場合には、関節鏡視下手術による骨棘や遊離体の切除などの手術を検討します。

肘の痛みや動かしにくさが続く場合や、肘が突然動かなくなったり、指のしびれを伴ったりする場合は、早めに手外科・整形外科を受診することをおすすめします。

側副靱帯損傷

側副靱帯損傷は、肘関節を左右から支え、安定性を保っている側副靱帯が、スポーツや外傷によって引き伸ばされたり、部分的または完全に断裂したりする疾患です。

肘には主に内側側副靱帯(MCL)と外側側副靱帯(LCL)があり、それぞれ損傷する原因や症状が異なります。内側側副靱帯は、野球の投球動作など肘に繰り返し負荷がかかることで損傷することが多く、外側側副靱帯は、転倒や肘関節脱臼などの強い外力によって損傷することが多くみられます。

内側側副靱帯損傷では、投球動作や物を持ち上げる動作で肘の内側に痛みが生じます。進行すると靱帯の緩みによって肘の安定性が低下し、「力が入りにくい」「投球時に肘が抜けるような感覚がある」といった症状が現れることがあります。

外側側副靱帯損傷では、転倒して手をついた場合や肘関節脱臼後などに、肘の外側の痛みや腫れが生じます。靱帯の損傷が残ると、ドアノブを回す、椅子から手をついて立ち上がるといった動作で「肘が外れそうになる」「ぐらつく」といった不安定感を感じることがあります。

診断には、受傷時の状況や症状の確認に加え、レントゲン検査、超音波検査、MRI検査などを行い、靱帯の損傷状態や関節の不安定性を評価します。必要に応じて、肘に負荷をかけた状態で撮影するストレスレントゲン検査を行うこともあります。

治療は、損傷の程度や関節の不安定性、スポーツ活動の有無などに応じて選択します。軽度の損傷や不安定性が少ない場合には、装具やサポーターによる固定、安静、リハビリテーションなどの保存療法を行います。

一方、靱帯が完全に断裂して不安定性が残る場合や、スポーツ選手で競技復帰を目指す場合には手術を検討します。手術では、損傷した靱帯を修復する方法や、自身の腱を移植して靱帯を再建する「靱帯再建術」を行います。内側側副靱帯の再建術は、野球選手に多く行われることから「トミー・ジョン手術」とも呼ばれています。

肘の痛みが続く場合や、肘が抜けるような感覚、不安定感、投球時の痛みがある場合は、早めに手外科・整形外科で精密検査を受けることをおすすめします。

上腕二頭筋腱炎

上腕二頭筋腱炎は、力こぶを作る筋肉である上腕二頭筋と肘の骨をつなぐ腱(上腕二頭筋遠位腱)に炎症や小さな損傷が起こり、肘の前面に痛みを生じる疾患です。

上腕二頭筋は、肘を曲げる動作や手のひらを上に向ける動作(回外動作)に関わる筋肉です。重い物を持ち上げる作業や腕をひねる動作を繰り返すことで腱に負担が蓄積し、炎症や腱の変性が起こると考えられています。ウエイトトレーニングや体操、テニスなどのスポーツ、力仕事に従事する方に多くみられます。

主な症状は、肘の前面の痛みです。「肘を強く曲げる」「手のひらを上に向けるように腕をひねる」「重い物を持ち上げる」といった動作で痛みが強くなります。また、腱の付着部を押すと痛みが出る(圧痛)ことも特徴です。進行すると、腕に力が入りにくい、動かした際に違和感があるといった症状が現れることがあります。

診断では、痛みの部位や症状の確認に加えて、超音波検査やMRI検査などを行い、腱の炎症や損傷の程度を評価します。必要に応じて、上腕二頭筋腱断裂などの他の疾患との鑑別を行います。

治療は、原因となる動作を控え、腱への負担を減らす保存療法が基本となります。痛みが強い時期には、サポーターや装具による固定、消炎鎮痛薬の内服・外用などで症状の改善を図ります。痛みが落ち着いた後は、ストレッチや筋力訓練などのリハビリテーションを行い、腱への負担を軽減して再発予防を目指します。

多くの場合は保存療法で改善しますが、慢性化して腱の変性が進んだ場合や、腱が完全に断裂した場合には、腱を骨へ再固定する手術を検討することがあります。

肘の前側の痛みが長く続く場合や、物を持ち上げる動作で痛みや力の入りにくさを感じる場合は、早めに手外科・整形外科を受診することをおすすめします。

屈筋腱炎・伸筋腱炎

屈筋腱炎・伸筋腱炎は、手首や指を動かす筋肉の腱に繰り返し負担がかかることで、肘周囲の腱に炎症や小さな損傷が生じ、痛みを引き起こす疾患です。

手首を手のひら側に曲げたり、指を握ったりする屈筋群に炎症が起こるものは「ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)」、手首を反らしたり指を伸ばしたりする伸筋群に炎症が起こるものは「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」とも呼ばれます。

原因は、手首や指の使いすぎによる腱への負担です。スポーツだけでなく、重い物を持つ作業、パソコン作業、家事など日常的な動作の繰り返しでも発症します。

主な症状は、肘の内側または外側の痛みです。物を持ち上げる、タオルを絞る、手首を動かすといった動作で痛みが強くなり、腱の付着部を押すと痛みが出ることがあります。進行すると握力低下や、薬指・小指のしびれを伴う場合もあります。

診断では、症状や痛みの部位を確認し、必要に応じて超音波検査やMRI検査で腱の状態を評価します。

治療は、原因となる動作を控えることが基本です。装具やエルボーバンドによる負担軽減、消炎鎮痛薬の内服・外用、ストレッチや筋力訓練などのリハビリテーションを行います。

保存療法で改善しない場合や、痛みが長期間続いて日常生活に支障がある場合には、傷んだ腱の修復など手術を検討することがあります。 肘の内側や外側の痛みが続く場合や、手を使う動作で痛みを繰り返す場合は、早めに手外科・整形外科を受診することをおすすめします。

肘内障(小児)

肘内障は、主に5歳以下の乳幼児に多くみられる肘のトラブルで、「肘が抜けた」と表現されることがあります。実際には骨が完全に外れる脱臼ではなく、肘の骨の一つである橈骨頭を支える輪状靱帯から骨がずれてしまう亜脱臼の状態です。

子どもの肘周囲の靱帯や骨はまだ発達途中で緩いため、手を引っ張るなどのわずかな力でも発症することがあります。転びそうになった際に手を引き上げる、子どもの腕を引っ張る、寝返りの際に腕をひねるなど、日常の何気ない動作がきっかけとなります。

主な症状は、突然泣き出して腕を動かさなくなることです。痛めた側の腕をだらんと下げ、肘を軽く曲げた状態で手のひらを内側に向けていることが多くみられます。肘内障では、通常は強い腫れや赤み、熱感はありません。

診断は、発症時の状況や症状から判断します。ただし、転倒や強い衝撃があった場合には骨折の可能性もあるため、必要に応じてレントゲン検査を行います。

治療は、「徒手整復」という処置を行います。医師が肘を適切な方向へ動かし、ずれた橈骨頭を元の位置へ戻します。処置は短時間で終了することが多く、整復後は数分程度で腕を使えるようになることが一般的です。

一度肘内障を起こすと、成長して肘周囲の組織が安定するまで再発しやすい傾向があります。お子様の腕を強く引っ張らないよう注意し、手を引く際は手首ではなく、腕全体や脇の下を支えるようにしましょう。

お子様が急に腕を動かさなくなった場合や、強い痛み・腫れがある場合は、無理に動かさず、早めに手外科・整形外科を受診することをおすすめします。

軟部腫瘍(ガングリオンなど)

軟部腫瘍とは、肘の皮膚の下にある筋肉、脂肪、神経、血管、関節包などの軟らかい組織から発生する「しこり」や「こぶ」の総称です。肘周囲にできる軟部腫瘍の多くは良性ですが、大きくなると肘の動きを妨げたり、周囲の神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こしたりすることがあります。

肘周囲でみられる代表的なものには、以下のようなものがあります。

ガングリオン

関節や腱の周囲にできる袋状の病変で、内部にゼリー状の液体が溜まっています。手首に多くみられますが、肘周囲にも発生することがあり、神経の近くにできると痛みやしびれの原因となることがあります。

脂肪腫

脂肪組織が増殖してできる良性腫瘍です。柔らかいしこりとして触れることが多く、徐々に大きくなると肘の曲げ伸ばしの際に違和感や圧迫感を生じることがあります。

表皮嚢腫(粉瘤)

皮膚の下に角質や皮脂が溜まった袋状の病変です。細菌感染を起こすと赤く腫れ、強い痛みを伴うことがあります。

症状としては、痛みのないしこりとして気づくことが多いですが、大きくなると肘の動きが制限されたり、周囲の神経が圧迫されて薬指や小指のしびれ、手の力が入りにくいといった症状が出ることがあります。

診断では、超音波検査やMRI検査を行い、しこりの大きさや性質、周囲の神経・血管との位置関係を確認します。良性で症状がない場合は経過観察とすることもありますが、ガングリオンでは内容物を吸引する処置を行うこともあります。

しこりが大きくなる場合、痛みや動かしにくさがある場合、神経症状を伴う場合には、腫瘍摘出術などの手術を検討します。

肘周囲にしこりを感じる場合や、痛み・しびれを伴う場合は、早めに手外科・整形外科を受診し、詳しい検査を受けることをおすすめします。

骨折(前腕骨骨折、モンテジア骨折、肘頭骨折など)

肘から手首の間にある前腕の骨や、肘周囲の骨が折れてしまう状態です。転倒して手をつく、肘を強く打つ、スポーツや交通事故などで大きな衝撃を受けることで発症します。

肘や前腕の骨折では、単に骨を治すだけでなく、肘の曲げ伸ばしや腕をひねる動作(回内・回外)といった機能を回復させることが重要です。骨のずれや変形が残ると、関節の動きが悪くなったり、日常生活に支障をきたしたりすることがあります。

代表的な骨折には以下のようなものがあります。

前腕骨骨折

前腕にある橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の一方、または両方が折れる骨折です。子どもから高齢者まで幅広い年代でみられます。前腕の2本の骨は連動して腕をひねる動きを行うため、骨のずれが残ると回旋動作に制限が出ることがあります。

モンテジア骨折

尺骨の骨折に加えて、橈骨の肘側で脱臼を伴う特殊な骨折です。骨折だけに見える場合でも、脱臼を見逃すと肘の動きが悪くなったり、神経障害を起こしたりする可能性があるため、正確な診断が重要です。

肘頭骨折

肘の後ろにある肘頭(ちゅうとう)と呼ばれる部分の骨折です。転倒して肘を直接打った際に起こることが多く、肘を伸ばす筋肉(上腕三頭筋)の力によって骨片がずれることがあります。

主な症状は、受傷直後からの強い痛みや腫れ、皮下出血です。痛みのため肘を動かせなくなったり、腕をひねる動作が困難になったりします。また、骨折部周囲の神経が傷つくと、手指のしびれや力の入りにくさを伴うことがあります。

診断では、レントゲン検査を基本に、必要に応じてCT検査を行い、骨折の位置やずれの程度、関節への影響を確認します。

治療は、骨折の種類やずれの程度によって選択します。骨のずれが少なく安定している場合は、ギプスや装具による固定で骨が治るのを待ちます。

一方、骨のずれが大きい場合や、脱臼を伴うモンテジア骨折、肘頭骨折などでは手術を検討します。手術では、骨を正しい位置に戻し、プレートやスクリュー、ワイヤーなどで固定します。適切な固定を行うことで、術後早期からリハビリテーションを開始し、肘の動きの低下を防ぎます。

肘や前腕を強く打った後に強い痛みや腫れがある場合、腕を動かせない場合は、早めに手外科・整形外科を受診し、精密検査を受けることをおすすめします。

末梢神経障害(円回内症候群・後骨間神経麻痺・前骨間神経麻痺など)

末梢神経障害とは、腕や手へつながる神経が圧迫されたり損傷したりすることで、しびれや筋力低下、指が動かしにくくなるなどの症状を引き起こす病気です。代表的なものに、正中神経が肘付近で圧迫される「円回内症候群」、橈骨神経の枝が障害される「後骨間神経麻痺」、正中神経の枝が障害される「前骨間神経麻痺」があります。

症状は障害される神経によって異なりますが、手や指のしびれ、物をつまみにくい、指が伸ばせない、親指と人差し指で丸を作れないなど、日常生活に支障をきたすことがあります。原因として、スポーツや仕事による繰り返しの負荷、外傷、腫瘍やガングリオンなどが挙げられます。

治療は原因や症状の程度に応じて行います。軽症では安静や装具療法、薬物療法、リハビリテーションなどの保存療法を行いますが、神経の圧迫が強い場合や麻痺が改善しない場合には、神経の圧迫を取り除く手術(神経剥離術・除圧術など)を検討します。

変形性関節症

変形性関節症とは、加齢や関節への繰り返しの負担、外傷などをきっかけに関節軟骨がすり減り、炎症や変形を生じる病気です。肘や手指などの関節に起こることがあり、痛みや動かしにくさの原因となります。

初期には動き始めの痛みや違和感がみられますが、進行すると安静時にも痛みを感じたり、関節の変形や可動域制限が目立つようになります。長年の使用による変化だけでなく、骨折や靱帯損傷などの外傷後に発症することもあります。

治療は症状や進行度に応じて行います。薬物療法や装具療法、リハビリテーションなどの保存療法を基本とし、症状が強く日常生活に支障がある場合には、関節形成術や関節固定術などの手術を検討します。

肘関節脱臼・骨折、靱帯断裂、筋断裂を伴う複合組織損傷

肘関節脱臼・骨折に靱帯や筋肉、腱などの損傷を伴う複合組織損傷は、転倒や交通事故、スポーツ外傷などの強い衝撃によって起こる重症の外傷です。骨だけでなく周囲の軟部組織にも損傷が及ぶため、肘の安定性や機能が大きく損なわれます。

受傷後は強い痛みや腫れ、変形、関節を動かせないなどの症状がみられます。神経や血管の損傷を伴う場合もあり、早期の適切な診断と治療が重要です。放置すると関節の不安定性や可動域制限、慢性的な痛みが残ることがあります。

治療は損傷の状態に応じて行います。軽度では整復や固定を行いますが、骨折や靱帯・筋腱の断裂を伴う場合には、骨折固定術や靱帯・腱の修復術などを組み合わせた手術が必要になることがあります。術後はリハビリテーションを行い、機能回復を目指します。

肘内側側副靱帯損傷・断裂

肘内側側副靱帯損傷・断裂とは、肘の内側にある関節を安定させる靱帯が損傷する病気です。野球やテニスなど、腕を繰り返し強く振るスポーツで発症しやすく、特に投球動作を行うアスリートに多くみられます。

初期には投球時や腕に力を入れた際の肘の内側の痛みが中心ですが、進行すると投球能力の低下や不安定感を自覚するようになります。重症例では靱帯が完全に断裂し、競技の継続が困難になることもあります。

治療は損傷の程度や競技レベルに応じて選択します。軽症では安静やリハビリテーション、フォームの改善などの保存療法を行いますが、高度な断裂や競技復帰を目指す場合には、靱帯修復術や靱帯再建術(トミー・ジョン手術)を検討します。適切な治療と段階的なリハビリテーションにより、安全な競技復帰を目指します。

肘部管症候群

肘部管症候群とは、肘の内側にある「肘部管」という神経の通り道で、尺骨神経が圧迫されたり引き伸ばされたりすることで起こる末梢神経障害です。尺骨神経は小指や薬指の感覚や、手の細かな動きを担っているため、障害されると手指のしびれや筋力低下などの症状が現れます。

初期には小指・薬指のしびれや違和感がみられ、肘を曲げた状態が続くと症状が悪化することがあります。進行すると、箸が使いにくい、ボタンを留めにくい、物をつまみにくいなど手の細かな動作が難しくなり、手の筋肉がやせてしまうこともあります。原因として、肘への繰り返しの負担、外傷による変形、加齢による神経の圧迫、肘関節の変形などが挙げられます。

治療は症状の程度や神経障害の進行度に応じて行います。軽症の場合は、肘を曲げ続ける姿勢を避ける、装具による固定、薬物療法、リハビリテーションなどの保存療法を行います。神経の圧迫が強い場合や筋力低下・筋萎縮が進行している場合には、神経の圧迫を解除する手術(肘部管開放術、尺骨神経前方移行術など)を検討します。早期に治療を開始することで、神経機能の低下を防ぎやすくなります。