ヘバーデン結節(変形性DIP関節症)

手指の第1関節の変形をへバーデン結節といいます。また、第1関節をDIP関節(distal interphalangeal joint)と呼ぶので、変形性DIP指関節症と呼ぶこともあります。

一般にDIP関節やPIP関節は、伸展位では側副靱帯や側索などの腱の作用で側方動揺性が抑えられますが、屈曲すると関節が緩むため、側方動揺性を生じます。側方動揺性のために関節面辺縁の軟骨損傷や炎症により、腫脹、疼痛を生じます。

軟骨損傷をともなうストレスが長期に及んでいると、生体防御機構から接触面積を増やし、動揺性を抑えようとするので、骨性隆起(骨棘)を生じるようになります。関節が肥大し、不安定性が収まると疼痛も軽減します。一般に治療としては、テーピング固定、リング固定などがあります。

また、へバーデン結節と呼ばれるDIP関節痛の中には、女性の更年期の手の不調の総称であるメタポハンドの一つの症状であることもあります。エストロゲン作用が低下すると、エストロゲンの関節保護作用、滑液・関節液産生能の低下をきたすため、関節面の軟骨損傷のリスクが高まり、それに伴い関節が炎症をきたしやすくなります。

メタポハンドの場合、エストロゲン作用を有しながらも、乳がんの増悪リスクがないエクオールが有用とされます。大豆などに含まれるイソフラボンがエストロゲンと同じ作用を有することがわかっており、エクオールは大豆イソフラボンの代謝産物です。エクオール産生能は世代、人種により変わるようで、産生能を検査する方法もあります。

保存療法のほかには、関節内注射、手術的加療が挙げられます。以前は関節固定が第1選択とされてきましたが、関節形成術や人工関節置換術も近年行われるようになってきております。

当院では関節形成術を行います。第1関節の背側から皮膚切開とし、伸筋腱付着部を可及的に温存、もしくは近位側で切離して展開し、伸筋腱付着部の骨棘を切除して関節面を形成します。骨棘を切除することで伸筋腱の緩みがでてしまう場合は、伸筋腱の緊張の強さの調整もあわせて行います。DIP人工関節に関しては、現在当院でもできるように準備をしております。

ばね指

ばね指は、指を曲げる腱(屈筋腱)と、その腱が通るトンネル状の組織である腱鞘(けんしょう)との間で炎症が起こる疾患です。腱鞘炎の代表的な病気であり、このほかにも橈側第1コンパートメントに生じるドケルバン腱鞘炎や腱交差症候群、Metacarpal Boss(中手骨基部の骨性隆起)による腱鞘炎などがあります。腱鞘が存在する部位であれば、どこでも腱鞘炎を生じる可能性があります。

また、糖尿病のある方では、腱組織に線維性物質が沈着することで腱の柔軟性が低下し、ばね指を含む腱鞘炎を発症しやすくなることが知られています。

ばね指では、指を動かした際に「カクン」と引っかかるSnapping(スナッピング)や、指が曲がったまま動かなくなるLocking(ロッキング)がみられます。この状態が続くと、手のひら側にあるA1プーリー(Annular Pulley)に炎症が生じ、痛みを伴うようになります。プーリーはA1からA5まで5か所存在し、手のひらから第1関節付近まで腱を支える重要な役割を担っています。

症状が長期間続くと、第2関節(PIP関節)が伸ばしにくくなり、関節包や掌側板(しょうそくばん)が硬くなることで伸展制限を生じることがあります。このような病態を合併している場合には、一般的なA1プーリー切開術だけでは十分な改善が得られないことがあります。その際には、必要に応じて皮膚切開を延長し、掌側板や側副靱帯の一部(fan-like portion)の切離、さらに浅指屈筋腱(FDS)の部分切除(半裁)などを行い、指の動きを改善します。

また、手術後は皮膚と内部組織が癒着することで、つっぱり感や痛みが生じることがあります。そのため、創部のケアや術後のマッサージ、リハビリテーションも良好な回復のために重要です。

当院では、病態に応じてできる限り小さな皮膚切開で手術を行っています。一方で、滑膜炎の切除など十分な処置が必要な場合には、安全性と確実性を優先しながら、手のひらのしわに沿った皮膚切開を行い、傷跡が目立ちにくくなるよう配慮しています。

屈筋腱損傷・断裂

屈筋腱縫合術は術者の技量で成績が左右されることが大きいですが、しかしながら軟部組織の癒着も治療過程で重要な成績不良因子となり得るので、リハビリも手術以上に重要とされます。手の外科手術は手術成績の30%が手術によるもの、70%がリハビリによるものとされますが、この手術はまさにその典型といえます。

屈筋腱損傷は損傷した部位により手術の難易度が変わります。指の伸展、屈曲で腱の滑走部位が変化するので、損傷した皮膚の場所と実際断裂した腱の部位が大きく異なることもあり得ます。

かつては浅指屈筋(FDS)と深指屈筋(FDP)が交差するプーリーの部分(A2)は、軟部組織や腱同士の癒着により成績が悪く、no man's landといわれていました。今までは強固に腱縫合をすることが難しく、縫合方法や縫合糸の研究が数多くされてきました。

これらの研究結果により、強固な縫合糸、ループ糸などが開発され、早期に可動することが可能になり、癒着を防止することができるようになってきました。その結果、近年では腱を強固に腱縫合し、早期に可動することで治療成績が改善しております。

当院では腱を6本以上主縫合とし、あわせて腱周囲縫合を追加し、術中に腱の縫合部にギャップが出ないことを確認し、プーリーなどの組織も再建します。術後も特定の装具を用いて可動訓練を行い、腱の回復時期にあわせてリハビリ内容を変えていきます。

骨折(末節骨骨折、舟状骨骨折、有鉤骨骨折、橈骨遠位端骨折など)

手や手首、指の骨折は、転倒やスポーツ、仕事中の外傷などによって起こります。

骨折する部位や骨折の形によって治療方法は異なり、保存療法で治療できるものから手術が必要なものまでさまざまです。

また、骨折だけでなく、腱や靱帯、神経、血管などを同時に損傷していることもあるため、正確な診断と適切な治療が重要です。

当院では、レントゲン検査に加え、必要に応じてCT検査やMRI検査を行い、患者様一人ひとりの骨折の状態に合わせた治療をご提案しています。

手指骨折

手や指の骨折には、末節骨骨折、舟状骨骨折、有鉤骨骨折などさまざまな種類があり、骨折の形やずれの程度、骨欠損の有無などによって適切な治療法は異なります。

良好な治療結果を得るためには、それぞれの骨折のパターンに応じた治療法を選択することが重要です。また、骨折にあわせて腱、靱帯、神経、血管などの軟部組織を損傷している場合もあり、それらを含めた総合的な診断・治療が必要となります。

一般的には鋼線を用い、骨折部を固定します。観血的に手術すると、非観血的手術より軟部組織の癒着をきたしやすいため、創外固定器を用いて手術する場合もあります。

関節面にかかる骨折が非観血的に整復できない場合、観血的に整復の必要があります。小骨片には軟鋼線を用いるpull-out法、舟状骨骨折など骨折部に圧迫をかけたい場合などはコンプレッションスクリューを用います。あわせて骨欠損を生じてしまった場合は人工骨移植や、関節面の軟骨損傷が強い場合、他の部位から軟骨面を採取し、軟骨移植をすることもあります。

指、手の骨折の中で、手根骨の一つである舟状骨骨折は見逃されやすい骨折です。手関節痛が持続している場合、舟状骨骨折の可能性があります。中にはほとんどずれがなく、CTやMRI検査で骨折がわかる場合もあります。

保存的治療を行った場合も、手術的加療を行った時と同じように、皮膚、腱、靱帯など損傷した軟部組織の癒着が可動域制限の原因となり得るので、骨折後のリハビリ加療が必要になることがあります。また、骨折部の骨癒合を促すため、超音波骨折治療器を当院では用いております。

橈骨遠位端骨折

橈骨遠位端骨折は、手首の骨折の中でも最も多くみられる骨折の一つです。手をついて受傷すると、一般的には手の甲側に傾いて変形するので、可能な限り元の傾きになるように整復します。手関節(橈骨手根関節)のずれが大きい場合、粉砕し関節面の整復が必要であると判断した場合は手術的加療をすすめます。

また、0.004%程度の頻度で骨折部のずれが少ない場合でも、橈骨のリスター結節部位で母指の伸筋腱である長母指伸筋腱(EPL)が皮下断裂することがあります。リスター結節部でEPLが走行を大きく変えるため、その部位の骨折が合併していると骨片、伸筋支帯下の圧迫、それに伴う虚血のため腱断裂をきたすと考えられています。

橈骨遠位端骨折の一般的な治療は、手のひら側の手関節部に2~3センチ程度の皮膚切開をおき、骨折部を整復しプレート、スクリューで固定します。手術時間は通常30分程度です。粉砕、骨欠損が高度な場合、創外固定器、掌側プレートに併せて橈側、背側プレートも用いる場合もあります。また、骨欠損部が大きく、手術後もずれを生じやすいと判断した場合は人工骨を使用することもあります。

外傷を契機に骨折した場合、骨粗鬆症があるために骨折したということが多いので、骨折後は1度骨密度検査をすることをお勧めします。

ミューカスシスト(粘液嚢腫)

手指の第1関節(DIP関節)の背側に生じる、ゼリー状の液体がたまった良性の腫瘤(できもの)です。へバーデン結節に合併して発症することが多く、関節内の軟骨変性や滑膜の炎症にともない、関節液が袋状に皮膚の下へ押し出されることで形成されます。

初期は無症状のことも多いですが、嚢腫が大きくなると周囲を圧迫して痛みを生じたり、爪の付け根(爪母)を圧迫することで爪に変形(縦の溝など)をきたしたりします。皮膚が薄くなると破れやすくなりますが、ご自身で針などで刺して潰すのは絶対に避けてください。関節内と直結しているため、細菌感染を起こすと化膿性関節炎や骨髄炎といった重篤な感染症を引き起こすリスクがあります。

治療としては、穿刺(針で内容物を吸引する)やステロイド注射などの保存療法がありますが、再発率が高いのが特徴です。根治を目指す場合や、皮膚の破綻リスクが高い場合、爪の変形が強い場合は手術的加療を行います。手術では小皮膚切開により嚢腫を切除するとともに、発生源となっているDIP関節の骨棘(骨のトゲ)をしっかりと削り、関節包の裏打ちを補強することで再発を防ぎます。

ブシャール結節

手指の第2関節(PIP関節)に変形や腫れ、痛みが生じる変形性関節症です。第1関節に起こる「へバーデン結節」と病態はほぼ同じですが、発生する部位が異なります。40代以降の女性に多く発症し、特定の原因はまだはっきりと解明されていませんが、手の使いすぎや更年期における女性ホルモン(エストロゲン)の減少、遺伝的要因などが関係していると考えられています。

初期の症状としては、朝方に指がこわばる、関節を曲げたときに痛む、といった違和感から始まります。進行すると関節の軟骨がすり減り、それを補おうとして骨棘(骨のトゲ)が形成されるため、関節全体がゴツゴツと横に肥大していきます。変形が進行している時期は強い痛みを伴うことが多いですが、変形が完了して関節のグラつき(不安定性)が収まると、徐々に痛みは落ち着いていく傾向があります。しかし、進行により指が完全に伸びきらなくなるなど、可動域の制限が残ることがあります。

治療としては、まずは局所の安静を保つためのテーピング固定や装具療法、消炎鎮痛剤の内服や外用薬などの保存療法を行います。へバーデン結節と同様に、女性ホルモンに似た働きをする成分「エクオール」のサプリメントが有用な場合もあります。痛みが強く、日常生活や仕事に著しい支障が出ている場合や、可動域制限が高度な場合には、滑膜切除術や関節形成術、場合によっては関節固定術や人工関節置換術などの手術的加療を検討します。

CM関節症

物をつまむときや、瓶のフタを回して開けるときなどに、親指の付け根付近に痛みをきたす変形性関節症です。母指CM関節とは、親指の根元にある手根骨(大菱形骨)と第1中手骨の間にある関節で、親指が他の4本の指と向かい合って自由に動くために極めて重要な役割を果たしています。そのため負担がかかりやすく、使いすぎや加齢、あるいは閉経後の女性ホルモンの減少などが原因で軟骨がすり減り、発症します。

初期の症状は、日常生活で親指に力を入れたときの「なんとなく痛い」「だるい」といった違和感から始まります。進行すると、関節の亜脱臼(ズレ)が起きるため、親指の付け根の骨が外側にポコッと突出して変形してきます。さらに変形が進むと、親指が開きにくくなり(内転拘縮)、それを補おうとして今度は上の関節(MP関節)が過伸展して「白鳥の首」のような変形をきたすこともあります。この段階になると、大きく手を開く動作や、細かい「つまみ動作」が著しく困難になります。

治療としては、まずは消炎鎮痛剤の外用薬や内服、CM関節専用の装具(スプリント)を用いた固定、テーピングなどの保存療法を行います。また、関節内へのヒアルロン酸やステロイドの注射も除痛に効果的です。これらの保存療法を数か月行っても痛みが強く、日常生活の支障が強い場合には手術的加療を検討します。手術方法には、関節を固定する「関節固定術」や、すり減った大菱形骨の一部または全部を切除して腱を移植する「関節形成術(靱帯再建術)」などがあり、患者様の年齢や活動性に合わせて最適な術式を選択します。

関節炎

手の関節炎とは、手首の関節に炎症が生じ、痛みや腫れ、熱感、動かしにくさなどを引き起こす状態の総称です。使いすぎによる負担や外傷、加齢による変性、関節リウマチ、感染などさまざまな原因で発症します。パソコン作業やスポーツ、家事などで手首を繰り返し使用する方に多くみられます。

初期には、手首を動かしたときの違和感や軽い痛みから始まり、症状が進行すると安静時にも痛みを感じたり、腫れや熱感を伴ったりすることがあります。握る・持ち上げる・ひねるなどの日常動作が困難になるほか、関節リウマチでは朝のこわばりが長く続くこともあります。原因によっては関節の変形や可動域制限をきたす場合もあるため、早期の診断と治療が重要です。

治療は原因に応じて行います。使いすぎや軽度の炎症では、安静やサポーター・装具による固定、消炎鎮痛薬の内服・外用、リハビリテーションなどの保存療法を行います。関節リウマチでは抗リウマチ薬、生物学的製剤などの専門的治療が必要となり、感染が原因の場合は抗菌薬による治療を行います。保存療法で改善が得られず、関節の変形や機能障害が進行している場合には、関節鏡手術や関節固定術、人工関節置換術などの手術を検討します。

関節症

加齢や関節への過度な負担、外傷などをきっかけに、関節の表面を覆っている軟骨がすり減り、炎症や変形をきたす病態です。手外科領域においては、指の第1関節に起こる「へバーデン結節」、第2関節の「ブシャール結節」、親指の付け根の「母指CM関節症」などが代表的です。特に40代以降の女性に多くみられ、手の使いすぎだけでなく、更年期における女性ホルモン(エストロゲン)の減少による関節保護作用の低下も深く関わっていると考えられています。

初期の症状は、動き始めの「こわばり」や、動かしたときの「なんとなく痛む」といった違和感から始まります。軟骨の摩耗が進行すると、骨同士が直接こすれ合うようになり、生体防御機構として接触面積を広げて関節を安定させようとするため、骨棘(骨のトゲ)と呼ばれる骨性隆起が形成されます。これにより関節がゴツゴツと肥大し、変形が進んでいきます。変形が進行している時期は強い痛みを伴いますが、変形が完了して関節のグラつき(不安定性)が収まると、痛みは徐々に落ち着く傾向があります。しかし、進行度によっては関節の可動域制限が残ることがあります。

治療としては、まずはテーピングや装具を用いた局所の安静、消炎鎮痛剤の内服や外用薬、関節内注射(ヒアルロン酸やステロイド)などの保存療法を行います。また、エストロゲン様作用を持つ「エクオール」などのサプリメントの摂取も有用です。これらの保存療法を行っても痛みが改善せず、日常生活や仕事に著しい支障をきたしている場合には、滑膜切除術、骨棘切除を伴う関節形成術、関節固定術、あるいは人工関節置換術などの手術的加療を検討します。

デュピュイトラン拘縮

手のひら(手掌)から指にかけての皮膚の下にある「手掌腱膜」という組織が異常に厚くなり、索状物(硬いひも状の盛り上がり)が形成されることで、指が徐々に曲がったまま伸びなくなる疾患です。腱そのものの病気ではなく、腱の表面を覆う組織の病態です。高齢の男性、あるいは糖尿病などの持病がある方に多くみられますが、明確な原因はまだ解明されていません。

初期症状としては、手のひらに硬い「しこり(結節)」や、皮膚の「ひきつれ」がみられることから始まります。この段階では痛みがないことが多いため、単なるマメやタコと勘違いされやすく、見過ごされることが少なくありません。進行すると、しこりが索状に つながって指の方へと伸びていき、特に薬指(環指)や小指が手のひら側に引っ張られるように曲がり、自力でまっすぐ伸ばすことが困難になります。日常生活では「顔を洗うときに指が目にあたる」「ポケットに手を入れて物を出し入れしにくい」「手袋がはめにくい」といった支障が出てきます。

治療としては、初期の曲がりが少ない段階では経過観察となりますが、ストレッチやマッサージによる改善は期待できません。手のひらを机にぴったりと平らにつけられない状態(テーブルトップテスト陽性)まで進行した場合や、日常生活への支障が強くなった場合は治療の対象となります。治療法には、以前は手術による腱膜切除(開創手術)が一般的でしたが、近年では「酵素注射(コラゲナーゼ注射)」により硬くなった腱膜を溶かして伸ばす治療法や、針を用いて経皮的に索状物を切離する「経皮的腱膜切離術」などの低侵襲な治療の選択肢もあり、患者様の状態や指の変形度合いに応じて最適な方法を選択します。

ドケルバン病

親指(母指)を動かしたときや、物をつまむ・持ち上げるといった動作の際に、手首の親指側(橈側)に強い痛みをきたす腱鞘炎の一種です。特に妊娠出産期や更年期の女性、またスマートフォンやパソコンの操作、育児、スポーツなどで手を頻繁に使う人に多く発症します。

親指の付け根には、指を広げる役割を持つ「短母指伸筋腱」と「長母指外転筋腱」という2本の腱が走っており、これらは「第1コンパートメント」と呼ばれるトンネル状の腱鞘を通っています。手の使いすぎなどによって腱と腱鞘の間に過度な摩擦が起きると、腱鞘が肥厚してトンネル内が狭くなり(狭窄)、腱の滑走が妨げられて激しい痛みや腫れを生じるようになります。

自己診断法として、親指を内側に倒して他の4本の指で握り込み、そのまま手首を小指側に強制的に曲げたときに手首の親指側に激痛が走るかどうかを調べる「フィンケルスタインテスト(Finkelsteinテスト)」が知られています。

治療としては、まずは局所の安静を保つためのテーピングや装具(スプリント)による固定、消炎鎮痛剤の内服や外用薬などの保存療法を行います。痛みが強い場合には、腱鞘内にステロイド注射を行うと非常に高い除痛効果が得られます。

これらの保存療法を行っても再発を繰り返す場合や、狭窄が高度で日常生活に著しい支障がある場合は手術的加療を検討します。手術は局所麻酔下で行われ、皮膚を小さく切開して分厚くなった腱鞘を切開し、腱を開放する「腱鞘切開術」を行います。短時間で安全に行うことができ、根本的な解決が期待できる手術です。

TFCC損傷

手首の小指側(尺側)にあるTFCC(三角線維軟骨複合体)が、外傷や加齢による変性などで損傷し、痛みを生じる疾患です。TFCCは軟骨や靱帯からなる組織で、手首への衝撃を吸収するとともに、遠位橈尺関節を安定させる重要な役割を担っています。

主な原因は、転倒して手をついた際の外傷や、テニス・ゴルフ・野球などでの繰り返しの負荷、仕事による手首の酷使などです。また、生まれつき尺骨が長い(尺骨プラスバリアンス)方では、小指側に負担がかかりやすく発症しやすいことがあります。

症状は、ドアノブを回す、タオルを絞る、重い物を持つなど、手首をひねる動作で小指側に痛みが生じるのが特徴です。進行すると、手首の不安定感や握力低下を伴うこともあります。

治療は、サポーターや装具による固定、消炎鎮痛薬、必要に応じてステロイドやヒアルロン酸注射などの保存療法を行います。3〜6か月程度の保存療法でも改善しない場合は、関節鏡を用いたTFCC縫合術や滑膜切除術・シェービング術、尺骨が長いことが原因の場合には尺骨短縮術など、病態に応じた手術を検討します。

側副靱帯損傷

側副靱帯損傷は、突き指や転倒などで指を強くひねった際に、関節の左右にある「側副靱帯(そくふくじんたい)」が引き伸ばされたり、断裂したりする外傷です。手外科領域では、指の第2関節(PIP関節)や親指の付け根(MP関節)に多くみられます。特に親指MP関節の尺側側副靱帯損傷は、スキーのストックを握ったまま転倒した際などに起こりやすく、「スキーヤーズサム」と呼ばれます。

側副靱帯は関節が横方向にぐらつくのを防ぐ重要な組織です。損傷の程度は、靱帯が伸びた軽症(Ⅰ度)、部分断裂の中等症(Ⅱ度)、完全断裂による重症(Ⅲ度)に分類されます。

主な症状は、受傷直後からの痛みや腫れ、皮下出血です。完全断裂では関節が横方向に不安定となり、ぐらつきが生じます。適切な治療を行わずに放置すると、靱帯が緩んだまま治癒し、慢性的な痛みや不安定性、変形性関節症の原因となることがあります。

治療では、レントゲン検査や超音波(エコー)検査で骨折の合併や靱帯損傷の程度を確認します。軽症から中等症では、アルミ副子(スプリント)やバディテーピングによる固定を約3~4週間行う保存療法が基本となります。一方、完全断裂による強い不安定性がある場合や、親指でステナー損傷を伴う場合、剥離骨折を合併している場合には、靱帯縫合や骨への再固定などの手術を検討します。

掌側板損傷

掌側板損傷は、突き指や転倒などで指が手の甲側へ強く反らされる(過伸展する)ことで、関節の手のひら側にある「掌側板(しょうそくばん)」という線維軟骨組織が引き伸ばされたり、断裂・剥離したりする外傷です。手指の第2関節(PIP関節)で多くみられます。

掌側板は、指の関節が過度に反るのを防ぐ重要な支持組織です。損傷すると、関節の手のひら側に痛みや腫れ、皮下出血を生じます。また、掌側板が剥がれる際に骨の一部も一緒に剥がれる「掌側板付着部剥離骨折」を伴うことがあります。 適切な治療を行わずに放置すると、指が過度に反りやすくなる「白鳥の首変形」や、関節が硬くなって指が伸ばしにくくなる「屈曲拘縮」を生じることがあり、日常生活に支障をきたす原因となります。

治療では、レントゲン検査や超音波(エコー)検査で骨折の有無や転位の程度を確認します。骨折が軽度で関節の脱臼がない場合は、指を軽く曲げた状態(軽度屈曲位)でアルミ副子(スプリント)を用いて約2〜3週間固定する保存療法を行います。 固定期間中や固定解除後は、拘縮を予防するために段階的な可動域訓練(リハビリテーション)が重要です。一方、骨片の転位が大きい場合や、関節の脱臼・不安定性が強い場合には、骨片や掌側板を修復・再建する手術を検討します。

伸筋腱損傷

伸筋腱損傷は、指を伸ばすための筋肉と骨をつないでいる伸筋腱(しんきんけん)が、刃物による切創や突き指などの強い衝撃によって断裂・損傷し、指を自力で伸ばせなくなる外傷です。伸筋腱は手の甲(手背)や手首の皮膚のすぐ下を走行しているため、比較的浅い傷でも損傷しやすい特徴があります。

損傷する部位によって症状や治療方法は異なります。特に多いのが、指の第1関節(DIP関節)で生じるマレットフィンガー(槌指)で、腱のみが断裂する「腱性マレット」と、骨の一部が剥がれる「骨性マレット」に分けられます。また、第2関節(PIP関節)の中央索が損傷すると、ボタンホール変形(ボタン穴変形)を生じることがあります。

主な症状は、損傷した指が曲がったままとなり、自分の力で真っ直ぐ伸ばせなくなることです。開放創では腱が露出していることもあります。

治療は、傷のない閉鎖性損傷(マレットフィンガーなど)の場合、専用の装具やアルミ副子(スプリント)で関節を伸ばした状態に固定する保存療法を行います。固定中は腱の修復を妨げないよう、指を曲げないことが重要です。

一方、刃物などによる開放性損傷や、骨性マレットで骨片の転位が大きい場合、保存療法で改善が得られない場合には手術を検討します。損傷部位や病態に応じて、腱縫合術や鋼線(ピン)による固定など、適切な術式を選択します。

腱損傷

筋肉の力を骨に伝え、指や手首を動かす紐状の組織である「腱(けん)」が、刃物による切創や突き指、骨折などによって断裂・損傷した状態です。手外科領域では、手のひら側の「屈筋腱損傷」と、手の甲側の「伸筋腱損傷」に大きく分けられます。

屈筋腱損傷(手のひら側)
指を曲げるための腱(浅指屈筋腱・深指屈筋腱)の損傷です。腱が通る腱鞘やプーリーの構造が複雑なため、手術後に腱と周囲組織が癒着しやすく、専門的な治療とリハビリテーションが重要になります。
伸筋腱損傷(手の甲側)
指を伸ばすための腱の損傷です。皮膚のすぐ下を走行しているため、比較的浅い傷でも切れやすい特徴があります。代表的な疾患として、指先が伸ばせなくなる「マレットフィンガー(槌指)」があります。

主な症状は、損傷した腱が担当する指を「自分の力で曲げられない」「伸ばせない」ことです。完全断裂では自然に修復することはなく、放置すると指の変形や機能障害が残ることがあります。

治療は、マレットフィンガーなど一部の閉鎖性損傷では装具や副子(スプリント)による保存療法を行いますが、開放性損傷や保存療法で改善が難しい場合には腱縫合術を行います。

当院では、特に高度な技術を要する屈筋腱損傷に対して、早期からリハビリテーションを開始できるよう、強固な腱縫合を行っています。腱損傷では、手術だけでなく、回復段階に応じた適切なリハビリテーションも重要です。

腱炎(伸筋腱・屈筋腱炎など)

指や手首を動かす筋肉の末端にある「腱(けん)」そのものに炎症が起き、痛みや腫れをきたす病態です。手外科領域では、手のひら側を通る「屈筋腱炎」と、手の甲側を通る「伸筋腱炎」に大別されます。腱の周囲を包むトンネル(腱鞘)に炎症が起きる「腱鞘炎(ばね指やドケルバン病など)」と深く関連しており、多くは腱炎と腱鞘炎を同時に併発します。

主な原因は、手の過度な使用(使いすぎ)です。パソコンのタイピング、スマートフォンの長時間操作、楽器の演奏、テニスやゴルフなどのスポーツ、あるいは育児や家事など、日常的に指や手首を酷使することで、腱に微小な断裂や慢性的な負荷がかかり炎症へと繋がります。また、関節リウマチや糖尿病、痛風などの持病、更年期や妊娠出産期における女性ホルモンの変化が背景にあって発症することもあります。

症状としては、該当する腱に沿った部位を押したときの痛み(圧痛)や、指・手首を動かしたときの運動時痛、局所の熱感や腫れが挙げられます。炎症が強くなると、動かしたときに「ギシギシ」「引っかかる」といった摩擦音や違和感を覚えるようになり、進行すると痛みのために握力が低下したり、満足に手が使えなくなったりします。

治療としては、まずは原因となっている動作を控え、局所の安静を保つことが最優先です。必要に応じてテーピングや専用の装具(スプリント)で固定します。あわせて消炎鎮痛剤の内服や外用薬(シップ・塗り薬)を使用し、痛みが強い場合には局所の炎症を抑えるステロイド注射を行うこともあります。

基本的にはこれらの保存療法で改善しますが、慢性化して腱の変性が著しい場合や、腱が肥厚して周囲の神経を圧迫しているような場合には、腱の周囲を掃除したり、圧迫を解除したりする手術的加療を検討することもあります。

神経損傷

刃物で切ってしまった(切創)、あるいは骨折や脱臼、強い圧迫などの外傷によって、手や指に走る末梢神経が連続性を失ったり、傷ついたりした状態です。手外科領域では、手のひら側を走る「正中神経」や「尺骨神経」、指の左右を走る「指神経」、手の甲側の感覚を司る「橈骨神経」などの損傷が頻繁にみられます。

神経が損傷すると、その神経が支配している領域に以下のような重大な症状が現れます。

感覚障害
触られた感覚がわからない、しびれる、熱さや冷たさを感じない(無感覚・知覚鈍麻)。
運動麻痺
指が特定の方向に動かせない、親指と小指を綺麗に合わせられない(対向運動不能)、指が不自然に変形する(鷲手変形など)。

特に指の感覚を司る「指神経」は、屈筋腱のすぐ側を通っているため、腱損傷と合併することが非常に多いです。切創などにより神経が完全に断裂してしまった場合、自然に繋がることはなく、放置すると神経の断端に「神経腫」と呼ばれる痛みを伴うしこりができたり、筋肉が永続的に萎縮して手の機能が著しく損なわれたりします。そのため、早期の正確な診断と治療が極めて重要です。

治療としては、神経が完全に断裂している開放性損傷の場合、手術的加療(神経縫合術や神経移植術)が第一選択となります。手術では、顕微鏡(マイクロサージェリー)を用いて、髪の毛よりも細い縫合糸で神経の膜(神経外膜)同士を精密に繋ぎ合わせます。

一方、骨折に伴う圧迫や引っ張りによる閉鎖性損傷で、神経の連続性が保たれていると判断される場合は、ビタミンB12製剤などの内服や装具療法を行いながら、神経の自然回復を待つ保存療法を選択することもあります。

手根管症候群

手根管症候群は、手関節よりやや遠位で主に横手根靱帯で絞扼される正中神経の末梢神経障害です。有病率は10~70%と幅があります。外傷を契機に発症したり、一過性の場合も含めるためです。

症状としては、正中神経が支配する手指のしびれ、夜間痛、握力低下などが挙げられます。知覚検査や神経伝導検査をおこなうと、正中神経領域の障害がみられます。しびれは手指の体表温度が下がる寒冷刺激で増悪し、神経伝導検査でも(電位や速度の)低下を示します。手根管症候群の症状が冬場に増悪するのはそのためです。

治療としては内服、装具、注射、手術などがあります。炎症が起きて神経周囲が腫脹している場合は、内服でも効果を認めます。装具療法は、手関節を曲げてしまうと正中神経の絞扼が増悪するので、装具をつけて手関節を掌屈させないだけでも、症状の改善がみられる場合があります。夜間に症状が増悪するのは、就寝時に手関節を掌屈してしまうことによることが多いです。

注射も正中神経周囲の腫脹を軽減するため効果がありますが、効果が一時的な場合は、横手根靱帯部での解剖学的な絞扼が高度なため、手術的加療で横手根靱帯部を切除する必要があります。手根管症候群となる病態はいろいろありますが、靱帯部での絞扼が原因の場合は、小皮膚切開で手術可能です。手のひらに1.5センチの皮膚切開で横手根靱帯を確認し、切離していきます。

手根管部分は血管、神経、副筋など、個人によって変わる場合があるため、確認しつつ横手根靱帯を前腕方向に関節鏡で確認しながら前腕筋膜まで開放し、また末梢方向の屈筋支帯(distal holdfast of the flexor retinaculum)まで正中神経が絞扼されていないか確認します。また、術前レントゲンや超音波で手根管内の石灰沈着や滑膜炎が強い場合は、小皮膚切開を展開して手術する場合もあります。

ギヨン管症候群

手首の小指側にある「ギヨン管(尺骨神経管)」という狭いトンネルの中で、神経が圧迫されたり引き伸ばされたりすることで、薬指や小指にしびれや痛み、運動麻痺をきたす疾患です。同じ尺骨神経の障害である「肘部管症候群(ひじの部分での圧迫)」に比べて頻度は低いですが、手首での局所的な負荷が原因となるため、手の外科において重要な疾患の一つです。

主な原因としては、サイクリング(自転車のハンドルによる圧迫)、手のひらを強くつく作業、大工道具や工具の常用といった慢性的な外部からの圧迫が挙げられます。また、ギヨン管の内部やその周辺にできた「ガングリオン」などの良性腫瘍による圧迫や、手首の骨折(有鉤骨鉤骨折など)にともなって発症することもあります。

症状の特徴は、薬指の小指側半分と小指における「しびれ」や「感覚の鈍さ」です。肘部管症候群とは異なり、手の甲側の小指側にはしびれが出ない(手首の手前で神経が枝分かれしているため)という特徴があります。進行すると、手のひらの細かい筋肉(骨間筋など)が萎縮し、指を閉じたり開いたりする動作がうまくできなくなります。さらに麻痺が進むと、指が真っ直ぐ伸びきらなくなる「鷲手(わし手)変形」をきたし、お箸が持ちにくい、ボタンが留めにくいといった日常生活への深刻な支障が現れます。

治療としては、初期や軽症の場合は、原因となる動作(圧迫)を避けるための生活指導、局所の安静(装具・スプリント固定)、ビタミンB12製剤の内服などの保存療法を行います。

しかし、ガングリオンなどの明確な圧迫原因がある場合や、筋肉の萎縮(筋力低下)が進行している場合、保存療法を続けてもしびれが改善しない場合には手術的加療を検討します。手術は局所麻酔下で行われ、皮膚を小さく切開してギヨン管を構成する靱帯などを切離し、神経への圧迫を完全に取り除く「ギヨン管開放術(尺骨神経剥離術)」を行います。

橈骨神経浅枝障害

手首の親指(母指)側から手の甲にかけて走る「橈骨神経浅枝(とうこつしんけいせんし)」が、周囲の組織に圧迫されたり、外部からの刺激を受けたりすることで、手の甲に「しびれ」や「痛み」をきたす疾患です。この神経は感覚(知覚)のみを司る神経であるため、指が動かしにくくなるといった運動麻痺が起きないのが特徴です。

主な原因としては、手首の親指側にある腱(腕橈骨筋と長橈骨手根屈筋)の間で神経が挟み込まれること(絞扼)が挙げられます。また、腕時計やブレスレットのきつい締め付け、手錠の嵌頓、あるいは作業中に手首の親指側を繰り返しぶつける・擦るといった外部からの直接的な圧迫も引き金になります。さらに、手首の親指側の腱鞘炎である「ドケルバン病」の強い炎症に合併して発症することもあります。

症状としては、手首の親指側から手の甲、親指と人差し指(示指)の背側にかけて、ジンジン・ピリピリとした「しびれ」や「感覚の鈍さ」が現れます。神経が圧迫されている部位(手首の少し肘寄りの場所)を叩くと、手の甲に向けて電気が走るような鋭い痛み(ティネルサイン)がみられるのが特徴です。

治療としては、まずは原因となっている外部からの圧迫(腕時計や装具の締め付けなど)を取り除き、局所の安静を保つことが最優先されます。あわせてビタミンB12製剤や消炎鎮痛剤の内服などの保存療法を行います。

多くの場合はこれらの保存療法で徐々に改善に向かいますが、しびれや痛みが極めて強く日常生活に著しい支障がある場合や、局所の瘢痕(キズあと)などによる頑固な圧迫がある場合には、皮膚を切開して神経の圧迫を解除する「神経剥離術」という手術的加療を検討することもあります。

爪周囲炎

爪周囲炎は、さかむけ(ささくれ)、深爪、爪を噛む癖、ネイルケアによる小さな傷などから細菌や真菌(カビ)が侵入し、爪の周囲に炎症が起こる疾患です。炎症の経過によって、細菌感染による急性爪周囲炎と、カンジダなどの真菌が関与する慢性爪周囲炎に分けられます。

急性爪周囲炎では、爪の周囲が赤く腫れ、ズキズキとした痛みを伴い、進行すると膿がたまることがあります。一方、慢性爪周囲炎は、水仕事が多い方や手を頻繁に洗う方に多くみられ、赤みや腫れが長期間続き、爪に横ジワや変形が生じることがあります。

治療は、症状に応じて抗菌薬や抗真菌薬の外用・内服を行います。膿がたまっている場合には、小さく切開して膿を排出する処置(切開排膿)を行うことがあります。また、慢性爪周囲炎では、水仕事の際に手袋を使用するなど、生活習慣の改善も重要です。

爪の周囲に赤みや腫れ、痛みが続く場合は、悪化する前に手外科・整形外科へご相談ください。

ひょう疽

ひょう疽は、さかむけ(ささくれ)、深爪、針やトゲによる傷、擦り傷などから細菌が侵入し、指先や指の腹、爪の周囲の皮膚の奥深くで炎症や化膿を起こす感染症です。爪周囲炎が進行して発症することもあります。

初期には赤みや腫れ、押したときの痛みがみられますが、進行すると指先全体が腫れ、脈打つような強い痛みや膿を伴うようになります。重症化すると、感染が骨や腱にまで及び、骨髄炎や化膿性腱鞘炎などを合併することがあるため、早期の治療が重要です。

治療は、初期であれば抗菌薬の内服や外用、患部の安静による保存療法を行います。膿がたまっている場合や痛みが強い場合には、局所麻酔下で切開し、膿を排出する処置(切開排膿)を行います。

指先の強い腫れやズキズキする痛みがある場合は、放置せず、できるだけ早めに手外科・整形外科をご受診ください。

爪脱臼

重い物を指の上に落とした、ドアに指を挟んだ、あるいはスポーツ中に強い衝撃を受けた際などに、爪(爪甲)が本来ついているはずの根元や床(爪床)から完全に、もしくは部分的に剥がれて外れてしまった状態です。

爪自体は硬い組織ですが、その下にある「爪床(そうしょう)」という皮膚組織と強く密着しています。爪甲脱臼が起きると、この爪床が一緒に裂けて激しく出血したり、爪の根元にある爪を作る組織(爪母)が傷ついたりすることが多く、非常に強い激痛を伴います。

「爪が剥がれただけだから、そのうち自然に生えるだろう」と自己判断で放置するのは禁物です。爪床が裂けたまま歪んで治ってしまうと、新しく生えてくる爪が変形したり、二度と正常に生えてこなくなったりする原因になります。また、剥き出しになった傷口から細菌が入り込み、重い感染症を引き起こすリスクもあります。さらに、強い衝撃によって爪の下の骨(末節骨)が折れる「末節骨骨折」を合併しているケースも少なくありません。

治療としては、まずはレントゲン検査で骨折の有無を確認します。

部分的に剥がれている場合

剥がれた爪を無理に全部剥がさず、元の位置に戻して固定し、新しい爪が生えてくるのを待つケースがあります(自分の爪が天然のギプス・保護材の役割を果たします)。

完全に剥がれている、または爪床の損傷が激しい場合

局所麻酔をした上で、新しくきれいな爪が生えてくるための「土台」を整えるため、裂けた爪床を細い糸できれいに縫い合わせる手術(爪床縫合術)を行います。

受傷直後は出血やパニックになりやすいですが、清潔なガーゼ等で圧迫止血をしながら、剥がれた爪がある場合は捨てずに一緒に持参し、速やかに手外科・整形外科を受診してください。

軟部腫瘍

軟部腫瘍とは、手や指、腕の皮膚の下にある筋肉、脂肪、神経、血管、関節包、腱鞘などの組織から生じる「しこり」や「こぶ」の総称です。手外科領域では、多くが良性であり、代表的なものにガングリオン、腱鞘巨細胞腫、脂肪腫、表皮嚢腫(粉瘤)、グロームス腫瘍などがあります。

最もよくみられるガングリオンは、関節包や腱鞘にゼリー状の内容物がたまってできる腫瘤で、手首や指の付け根に発生しやすいのが特徴です。一方、腱鞘巨細胞腫は比較的硬い良性腫瘍で、徐々に大きくなることがあります。

グロームス腫瘍は、爪の下や指先にできることが多い小さな良性腫瘍です。見た目にはほとんど分からないこともありますが、わずかに触れただけでも強い痛みを感じたり、寒い場所で痛みが増したりするのが特徴です。

症状は痛みのないしこりとして気づくことが多いですが、大きくなると神経を圧迫して痛みやしびれ、指の動かしにくさを生じることがあります。また、粉瘤では細菌感染を起こし、赤く腫れて痛みを伴うこともあります。

診断には、超音波(エコー)検査やMRI検査、必要に応じてレントゲン検査を行い、腫瘍の性質や周囲組織との位置関係を確認します。症状がなく良性と考えられる場合は経過観察を行いますが、ガングリオンでは穿刺による内容物の吸引を行うことがあります。また、痛みやしびれがある場合、大きくなる場合、再発を繰り返す場合や、グロームス腫瘍・腱鞘巨細胞腫など自然に改善が期待しにくい腫瘍では、摘出手術を検討します。

手や指にしこりを見つけた場合や、原因の分からない指先の強い痛みが続く場合は、自己判断せず手外科・整形外科へご相談ください。

キーンベック病

キーンベック病は、手首を構成する手根骨の一つである月状骨(げつじょうこつ)への血流が障害され、骨が壊死・変形していく疾患です。 20~40代の手をよく使う方に多くみられますが、高齢者でも発症することがあります。

原因は完全には明らかになっていませんが、月状骨はもともと血流が少ない構造であることに加え、手首への繰り返しの負担や微細な外傷などが関与すると考えられています。

初期には、手首の中央付近の痛みや腫れ、握力の低下などがみられます。進行すると手首の可動域が狭くなり、ドアノブを回す、物を持つ、手をつくといった日常動作でも痛みを感じるようになります。

診断にはレントゲン検査やMRI検査を行い、病期を評価します。初期であれば、ギプスや装具による固定と安静を中心とした保存療法を行います。一方、骨の変形が進行している場合や保存療法で改善しない場合には、橈骨短縮骨切り術や血管柄付き骨移植術、部分関節固定術など、病態に応じた手術を検討します。

手首の痛みが長く続く場合や、捻挫と思っていても改善しない場合は、早めに手外科・整形外科で精密検査を受けることをおすすめします。