骨の構造と「骨代謝(骨リモデリング)」の仕組み
骨は、Ⅰ型コラーゲンを主体とした有機基質と、カルシウムやリンからなる無機質(ハイドロキシアパタイト結晶)によって構成されています。
骨は一度作られたらそのままではなく、常に新しく作り直されています。これを骨代謝(骨リモデリング)と呼び、主に骨表面の全体の約20%の領域で行われていると推定されています。骨代謝のスピードは通常約3か月です。
骨代謝は、次の2つの細胞がバランスよく働くことで、恒常性が維持されています(これをカップリングと呼びます)。
破骨細胞(骨を壊す細胞)
骨表面に接着し、たんぱく分解酵素によってハイドロキシアパタイトと骨基質たんぱくを分解します(骨吸収期:約1か月)。
骨芽細胞(骨を作る細胞)
Ⅰ型コラーゲンなどの基質たんぱくを産生・分泌し、そこにハイドロキシアパタイト結晶が沈着することで骨が形成されます(骨形成期:数か月持続)。
通常、骨吸収と骨形成のバランスは一定に保たれていますが、骨粗鬆症では、骨芽細胞の代謝よりも破骨細胞の代謝が亢進し、骨の密度が低下した状態になります。
骨粗鬆症の原因と診断検査方法
骨粗鬆症の病態は、性ホルモンの減少による骨吸収亢進と、加齢による骨形成不全を背景とする骨密度の低下に、酸化ストレス亢進による骨質の劣化が加わり骨強度が低下することで引き起こされます。全員が発症するわけではなく、遺伝的な要因と生活習慣(運動、食事、飲酒、喫煙など)が大きく関与します。
一般に骨密度は30~40歳をピークに低下します。男性の低下は緩徐ですが、女性は閉経後(実際には閉経の1~2年前より)にエストロゲンの産生量が減るため、骨密度の低下が急激に進行します。
骨粗鬆症の診断検査方法
骨粗鬆症の診断検査方法として、二重エネルギーX線吸収測定(Dual energy X-ray absorptiometry:DXA)法によって検査を行います。若年成人平均値(young adult mean:YAM)の標準偏差を基準として、以下のように診断されます。
-1 SD 以下:骨量減少
-2 SD 以下:骨粗鬆症
2012年の診断基準
既存骨折の中で「椎体骨折」や「大腿骨近位部骨折」がある場合は、骨密度に関係なく骨粗鬆症とされます。それ以外の脆弱性骨折がある場合は、骨密度がYAM 80%未満の場合も骨粗鬆症と診断されます。。
骨代謝マーカーによる治療評価
骨粗鬆症を治療するうえで骨代謝状態を把握することは非常に重要です。骨代謝マーカーは、骨吸収と骨形成の状態を反映するマーカーです。骨吸収・骨形成のいずれが高値でも、骨密度の減少速度は速いことを意味します。
骨代謝マーカーの上昇=骨粗鬆症というわけではないですが、将来の骨粗鬆症発症および増悪因子を予測することができます。また、骨粗鬆症と診断された場合は骨代謝マーカーの変化を追うことで治療効果の評価を行うことができます。
Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)
骨芽細胞が骨基質を生成する際に血中に放出される代謝産物であり、骨芽細胞の活動性を評価しています。
酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP-5b)
破骨細胞が活性化された際に破骨細胞から産生される酵素(骨吸収時に骨組織から産生されるⅠ型コラーゲン産物)であり、破骨細胞の活動性を評価しています。
骨質規定因子とリスク疾患
2000年代に入り、骨密度以外にも骨強度規定因子として「骨質(こつしつ)」が注目されるようになっています。骨粗鬆症の病態には骨密度低下とともに骨質の劣化が関与しており、骨密度検査では正常でも骨折を生じる場合、骨質の劣化が関与する場合があります。生活習慣病の中には、骨質低下型の骨折リスク上昇を示す報告が集積されています。
糖尿病
骨粗鬆症の原因になり得ます。骨質劣化の機序として、コラーゲン繊維間の終末糖化産物(AGEs)の蓄積、骨微細構造物の劣化(皮質骨多孔化)、海綿骨スコアの低下、骨形成低下を主とする骨モデリング障害が関連すると考えられています。AGEsが形成されしなやかさが失われ、骨量を維持したまま骨強度が低下します。また生活活性物質として骨芽細胞や骨細胞の機能低下にも関与します。
末期腎不全・透析患者
骨折リスクが高いことが知られており、腎機能が低下している場合、正常機能に比べ約2倍のリスクあると報告されています。腎機能障害においても骨質劣化が示唆され、続発する副甲状腺機能亢進症に基づく骨代謝回転の亢進、皮質骨多孔化が関与すると報告があります。
慢性呼吸不全・喫煙
慢性呼吸不全では正常より1.5~2倍程度骨折のリスクが高いことが示唆されています。喫煙自体が骨折のリスクであり、喫煙による全身の慢性炎症状態が炎症性サイトカインを惹起し、骨代謝に負の影響を及ぼすと考えられています。
ステロイド
ステロイドも骨折のリスク因子であります。
骨粗鬆症治療薬の種類と特徴
骨粗鬆症治療薬は大きく分けて4種類あります。
① 破骨細胞の働きを抑える薬(およびカルシウム吸収を促す薬)
ビスフォスフォネート剤
破骨細胞による骨吸収に際して波状縁から破骨細胞に取り込まれ、破骨細胞が不活化され骨吸収を抑制します。主に毎日や月一の内服か、月1回の注射を使うことが多いです。
注意点
起床時、食前30分前までに内服し、内服後は消化器症状を起こさないよう寝ないようにする必要があります。また、必ず歯科受診するときはこの薬を飲んでることを伝える必要があります。
活性型Vitamin D₃製剤
腸管からのカルシウム吸収促進および骨吸収する破骨細胞の形成抑制を介して、骨密度上昇・骨折抑制効果を発揮します。高カルシウム血症にならないように定期的に採血検査が必要です。
抗RANKL抗体デノスマブ
RANKL(NF-κB活性化受容体リガンド)は破骨細胞の分化・活性化を担う物質で、破骨細胞前駆細胞にRANKLの受容体(RANK)が発現しており、RANK-RANKL結合により破骨細胞の分化が誘導されます。デノスマブは完全ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体で、RANKLと特異的に結合することで破骨細胞の分化活性化を抑制します。
② 骨芽細胞を活性化する薬(PTH製剤:テリパラチド)
骨形成促進薬であり、皮下注射による間欠的投与は骨量を増加させる作用を示します(持続的な副甲状腺亢進状態は骨代謝の亢進と骨量の減少を引き起こすため、間欠的な投与でなければなりません)。直接的な幼弱な骨芽細胞の増殖・分化を促進し、骨折後の仮骨形成も促進することから、骨折治癒促進効果も期待されています。
病院で注射するタイプ
週に1回来院していただき注射します。始めのうちは体幹の痛みや熱が出る人もいます。
自分か家族が注射するタイプ
毎日1回、自分もしくは家族などの人に注射してもらうタイプです。
注意点
一生のうちで2年間しか使えません。
③ 女性ホルモンにかかわる薬
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM剤)
エストロゲン受容体に作用し、臓器・組織によって選択的にエストロゲン作用・抗エストロゲン作用を有する薬剤です。骨に対してはエストロゲン作用を示し、骨密度を増やします。他に骨外作用として乳がんの予防効果があげられますが、深部静脈血栓症を増加させるというデメリットも有しています。
④ 破骨細胞の働きを抑え、骨芽細胞を活性化する薬
ロモソズマブ
スクレロスチンに結合し阻害することで、骨形成促進と骨吸収抑制作用をもつ薬剤(ヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体)です。スクレロスチンは骨細胞から分泌される糖たんぱく質で、骨芽細胞の骨形成を低下させると同時に破骨細胞による骨吸収を増加させることにより骨量増加を阻害します。月1回、1年間で12回注射する必要があります。
発症予防と積極的治療の意義
骨粗鬆症の発症予防は、若年期に高い骨量を獲得しておくこと、閉経後にその骨量を維持することが大切になります。若年期から運動をする習慣、骨粗鬆症を早期に発見し介入できるよう定期的に検診することが推奨されています。
国内の調査では、1か所の骨粗鬆症性圧迫骨折は長期予後に影響はないですが、2か所以上では寿命が5年短縮するという報告があります。当院では、椎体骨折がドミノのように連続しないように積極的に治療をすすめております。
骨粗鬆症を治療することは、骨折のリスクの減少、骨粗鬆症に伴う慢性疼痛の軽減などの患者さんの健康生活レベルを上げるだけではありません。骨折した場合の治療費、介護費、生産性の喪失などの経済的側面からの費用対効果が高い治療法といえます。骨粗鬆症に関してご心配であれば是非ご相談ください。